ポーチュガルは「おじさん」の香り?その魅力と違いを専門家が解説

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「ポーチュガル おじさん」と検索すると、どこか懐かしく、温かみのあるイメージが浮かびますね。それは果たして、単なる「おじさんの香り」なのでしょうか?

いいえ、フレグランスマイスターの私から言わせいただければ、そこには世代を超えて愛される確かな理由と、知られざる物語が隠されています。

この記事では、なぜポーチュガルが「おじさん」の香りと呼ばれるようになったのか、その背景にある物語、そして混同されがちな名作「4711 オリジナル」との決定的な違いを徹底的に解き明かします。さらに、専門家が分析する香りのピラミッドから、香水だけではないラインナップ、そして性別や世代を超えて楽しむための活用術まで、その奥深い世界のすべてへご案内します。

  • 「ポーチュガル=おじさん」のイメージが生まれた本当の理由
  • 4711「オリジナル」と「ポーチュガル」の香りの決定的違い
  • 専門家が分析するポーチュガルの香りのピラミッドと構成
  • 香水だけじゃない「ポーチュガル」製品ラインと正しい使い方
目次

「ポーチュガルおじさん」は褒め言葉? 世代を超える香りの謎を解明

  • なぜ「おじさん」の香り? 懐かしさの正体
  • 40代・50代男性に響いた柳屋本店の戦略
  • 4711「オリジナル」と「ポーチュガル」の決定的な違い

なぜ「おじさん」の香り? 懐かしさの正体

「ポーチュガル」と聞いて、特定の世代の男性を思い浮かべるのは、とても自然なことです。実際に「主人の愛用品」「若い頃使っていて懐かしい」といった口コミが、その事実を裏付けています。

ですが、そのイメージは決してネガティブなものではありません。むしろ、一つの香りが一世代の男性たちの「シグネチャーセント(その人を象徴する香り)」になるほど、深く愛され、浸透したという証拠なのです。

考えてみてください。流行の香りが目まぐるしく変わる現代において、何十年も変わらず「あの人の香り」として記憶され続けることが、どれほど稀有で素晴らしいことか。

香りの世界で「おじさんの香り」という言葉は、時として「古臭い」という意味ではなく、「長く愛され続けた信頼の証」であり、「クラシックな定番」を意味する褒め言葉として使われます。ポーチュガルは、まさにその代表格。それは、一過性の流行ではなく、多くの人の人生に寄り添い、記憶に刻まれてきた「本物」の香りであることの証明なのです。

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フレグランスマイスターの私にとって、こうした「世代の香り」は、その時代の空気や価値観を閉じ込めたタイムカプセルのような存在。ポーチュガルが持つ「おじさん」のイメージは、日本における男性のグルーミング文化の成熟と共にある、尊い歴史そのものなのです。

40代・50代男性に響いた柳屋本店の戦略

では、なぜ日本では「ポーチュガル」と「おじさん」のイメージが、これほど強く結びついたのでしょうか。その背景には、日本の総代理店である「柳屋本店」による、非常に巧みなブランド戦略が存在します。

2016年、柳屋本店は「4711 ポーチュガル」の広告契約を、モデルでありアウトドアエッセイストの木村東吉氏と締結しました。木村氏は1980年代から90年代にかけてファッション雑誌「ポパイ」などで活躍し、若者世代のファッションアイコンとして知られています。

この起用が意味するのは何か。それは、かつて「ポパイ」を読んでいた世代、つまり当時20代だった若者たちが、2016年当時には40代から60代の円熟した男性になっていた、ということです。

プレスリリースには、この広告の目的が「年を重ねながらも、魅力的な男を演出する」ブランドイメージを伝えるためであり、ターゲットを明確に「40~60代」に設定していると記されています。

ポーチュガルの戦略的ターゲティング

  1. ターゲット:40代~60代の男性
  2. 起用モデル:木村東吉氏(ターゲット世代の若き日のアイコン)
  3. ブランドイメージ:「年を重ねながらも、魅力的な男を演出する」

つまり、「おじさん」のイメージは偶然の産物ではなく、自分たちの青春時代のスターと共に、格好良く年を重ねたいと願う男性たちの心に、的確に響かせた結果なのです。これは、香水マーケティング史における、見事な成功例の一つと言えるでしょう。

4711「オリジナル」と「ポーチュガル」の決定的な違い

「4711」というブランドについて語る時、多くの人が混同してしまう最大のポイントがあります。それは、世界的に有名な青いボトルの「4711 オリジナル オーデコロン」と、私たちが今話している緑のボトルの「4711 ポーチュガル」です。

この二つは、名前こそ似ていますが、香りの成り立ちもコンセプトも全く異なる、別の製品です。

まず、「4711 オリジナル」は、18世紀末から19世紀初頭にかけてドイツのケルンで誕生した伝統的なオーデコロン(ケルンの水)です。その起源は1792年とも1803年ともされ、諸説あります。商品名の「4711」は、ナポレオン占領時代の工場の番地に由来します。香りは「シトラス・アロマティック」に分類され、柑橘類やハーブが爽快に香り、リフレッシュ効果が高い一方で香り持続は短めです。

一方、「4711 ポーチュガル」は、それよりずっと後、ヨーロッパでは1980年代前半に発売、日本では2007年より流通しています。最大の違いは、その香調が「シトラス・シプレ」であること。シプレとは、柑橘系のトップノートに対し、ラストノートがオークモス(苔)やパチュリ、ウッディ系で構成される、深みと落ち着きのある香調を指します。このシプレ香調は、クラシックで深みのある特徴があり、男女問わず多くの香水に採用されています。ポーチュガルではウッディ・モッシーなベースが深みと落ち着きを演出しており、一般的にオリジナルよりも香りの持続性が高く感じられますが、実際の持続時間は香料濃度や製品形態によって異なります。

「おじさん」のイメージ、すなわち「クラシックで落ち着いた大人の男性」という印象は、この「シプレ」の構成を持つポーチュガル独自のものであり、「オリジナル」にはない特徴なのです。

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特徴 4711 オリジナル (Original) 4711 ポーチュガル (Portugal)
誕生年 1792年 1982年 (EDT) / 2007年 (日本)
香調 シトラス・アロマティック シトラス・シプレ
香りの構成 柑橘、ラベンダー、ネロリ 柑橘、スパイス、モス (苔)ムスク
印象 爽快、リフレッシュ、中性的 クラシック、温かみ、男性的
持続性 非常に短い(数分~30分程度) 短め~標準(EDC/EDTによる)

専門家が愛する「ポーチュガル」の魅力と、”おじさん”だけじゃない活用術

  • 香りの物語:地中海の風を運ぶシトラス・シプレ
  • 香りのピラミッド:スイートオレンジと深き森の調和
  • 日常を彩るグルーミング・エコシステム
  • 女性や若者にも推薦?口コミと新たな可能性
  • プロが教える:香りを最大限に活かす纏い方

香りの物語:地中海の風を運ぶシトラス・シプレ

「ポーチュガル」の本当の魅力を知るには、その香調である「シトラス・シプレ」を理解する必要があります。

まず、この「ポーチュガル」という名前は、オレンジの品種「ポルトガル・スイートオレンジ」などの地中海的イメージに由来するという説が一般的ですが、香水ブランド側が歴史的事実として「大航海時代にポルトガル人がヨーロッパへ初めてオレンジを伝えた」という公式見解は提示していません。そのため、香水のネーミングに関する具体的な史実の裏付けには注意が必要です。

そして、この情景を香りで表現するために選ばれたのが「シプレ」という伝統的な香りの構成です。シプレとは、明るく爽やかな「シトラス(柑橘系)」のトップノートと、暗く落ち着いた「ウッディ・モッシー(樹木や苔)」のベースノートという、光と影の強いコントラストを特徴とする香調です。

香りの豆知識:シプレ(Chypre)とは?

1917年にコティ社が発売した香水「シープル」が語源。フランス語でキプロス島を意味します。主な構成は「ベルガモット(柑橘系)」「ラブダナム(樹脂系)」「オークモス(苔)」「パチュリ」など。明るさと陰影を併せ持つ、非常に洗練されたクラシックな香調として知られています。

ポーチュガルが誕生した1982年頃は、Aramis(1966年)やPolo(1978年)といった、骨太な「シプレ」系のメンズフレグランスが世界を席巻した黄金時代でした。ポーチュガルもまた、その系譜に連なる名作の一つ。調香師ジャン=ミッシェル・サントリーニによって生み出されたこの香りは、単に「古い」のではなく、香水史における一つの完成された「様式美」なのです。

香りのピラミッド:スイートオレンジと深き森の調和

では、ポーチュガルの香りは、具体的にどのように変化していくのでしょうか。その香りのピラミッド(時間経過による香りの変化)を詳しく見てみましょう。

トップノート (Top Notes): スイートオレンジ、レモン、ベルガモット
つけた瞬間、弾けるのは、その名の通りのやさしいスイートオレンジと、フレッシュなレモン、ベルガモットです。一般的なシトラスコロンのような鋭い酸味ではなく、太陽をたっぷり浴びた果実そのもののような、温かみと丸みのある甘さが特徴です。ここが、ポーチュガルが「地中海の太陽」と称される所以です。

ミドルノート (Middle Notes): コリアンダー、アーモイズ(ヨモギ)
輝かしいシトラスが少し落ち着くと、次に現れるのは意外な「影」の部分です。ピリッとスパイシーなコリアンダーと、ハーブ特有の青々とした苦味を持つアーモイズ(ヨモギ)。このスパイシーでビターなミドルノートが、トップの甘さを引き締め、香りに知的な複雑さと、クラシックな男性らしさを与えます。

ベースノート (Base Notes): エボニー(黒檀)、モス(苔)、ムスク、パチュリ
そして最後は、シプレの真骨頂であるベースノートへと着地します。残香性の高いエボニー(黒檀)パチュリといったウッディノート、そしてモス(苔)がもたらす、雨上がりの森の土のような湿った香り。それらを、ムスクがすべてを柔らかくまとめ上げ、肌の上で温かく深みのある余韻を残します。この「太陽のオレンジ」から「深き森の陰」へのドラマティックな変化こそが、ポーチュガルの最大の魅力です。

日常を彩るグルーミング・エコシステム

ポーチュガルの人気が根強いもう一つの理由は、それが単一の香水ではなく、男性の日常生活(グルーミング)を丸ごとサポートする「エコシステム」として設計されている点にあります。

香水(オーデコロン、オードトワレ)はもちろんのこと、髭剃り後に肌を整える「アフターシェーブローション」、頭皮を健やかに保つ「ヘアトニック」、そして髪をセットする「ヘアリキッド」や「ヘアクリーム」、さらにはシャンプーやコンディショナーまで、ほぼ全てのラインナップが同じ香りで統一されています。

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これは、朝の身支度から夜のケアまで、ほのかな香りをレイヤリング(重ね付け)することで、その人自身の「香り」として生活に溶け込ませるという、非常にクラシックで洗練された考え方です。特にヘアトニックやアフターシェーブは、香水よりもさらにさりげなく香るため、今でも根強い人気を誇っています。

この「ライン使い」ができるという信頼感が、多くの男性を虜にし、「おじさん」と呼ばれる世代の定番アイテムとして定着したのです。

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製品名 種類 特徴と使い方
オーデコロン (EDC) オーデコロン (香水) 賦香率が低く(5%未満)、最も軽やかに香る。リフレッシュに最適。手の平にとり、手首やうなじに叩き込むように使う。
オードトワレ (EDT) オードトワレ (香水) EDCより香りが持続。スプレータイプ。クラシックな香水として。ひじや膝の内側などにスプレーする。
アフターシェーブローション 化粧水 髭剃り後の肌をひきしめ、整える。さっぱりとした使い心地で、ほのかに香る。
ヘアトニック 頭皮用化粧水 頭皮にうるおいを与え、フケ・かゆみを防ぐ。適量を頭皮にふりかけ、指の腹でマッサージするように使う。
ヘアリキッド 液体整髪料 (油性) 髪にツヤとしなやかさを与え、スピーディーにセット。クラシックなスタイルに。

女性や若者にも推薦?口コミと新たな可能性

さて、ここまで「おじさん」や「男性」というキーワードで語ってきましたが、ここで一つの重要な事実に触れなくてはなりません。

ポーチュガルは、本当に「男性専用」なのでしょうか?

答えは、「いいえ」です。

日本では柳屋本店が男性を主要ターゲットとしていますが、本国ドイツのモイラー&ヴィルツ社では「4711 ポーチュガル」をユニセックス(性別不問)として展開する一方、4711ブランドには男性用・女性用に区分される香水が存在するため、全てがユニセックスとは限りません。香りのデータベースサイトでは、多くの4711製品が「ユニセックス」と分類されています。

実際の口コミを見てみても、「主人の愛用品ですが、夏に私もたまに使用しています。柑橘系の香りが心地よいです」といった女性のレビューや、「10代~20代の人が付けていたら好感が持てる」「男女ともいけます」といった評価が存在します。

確かに、クラシックなシプレの構成は、現代の甘いフルーティー・フローラル系の香りに慣れた方には、少し大人っぽく、あるいは「おじさん」っぽく感じるかもしれません。しかし、それは「個性的」であり「他と被らない」という最大のメリットでもあります。

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甘すぎる香りが苦手な女性や、ありきたりな「爽やか系」に飽きた若い男性にこそ、私はこのポーチュガルを試してみてほしいのです。このクラシックな「シトラス・シプレ」の様式美は、あなたの個性を際立たせる、最高の武器になるはずです。

プロが教える:香りを最大限に活かす纏い方

ポーチュガルのようなクラシックな香りは、纏い方一つで印象が大きく変わります。その魅力を最大限に引き出す、プロならではの使い方をご紹介しましょう。

1. オーデコロン(EDC)は「面」で、オードトワレ(EDT)は「点」で
ポーチュガルにはEDC(オーデコロン)とEDT(オードトワレ)の2種類があります。EDCは香料濃度が低いため、手の平にとり、うなじや胸元、腕の内側などに「面」で叩き込むように使うと、肌から立ちのぼるほのかな香りをリフレッシュ感覚で楽しめます。

一方、EDTは濃度が高いスプレータイプです。こちらは手首やひじの内側、膝の裏など、脈打つ「点」に軽くスプレーしてください。体温で温められ、香りが豊かに変化していくのを楽しめます。

2. ヘアトニックは「頭皮」に、ヘアリキッドは「髪」に
グルーミング製品も使い分けが肝心です。ヘアトニックは整髪料ではなく「頭皮用化粧水」です。洗髪後や朝のセット前に、適量を頭皮に直接ふりかけ、指の腹で優しくマッサージしてください。頭皮を健やかに保ち、フケやかゆみを防ぎながら、頭からふんわりと香らせることができます。

ヘアリキッドは「整髪料」です。髪にツヤとまとまりを与えるため、セットの際に手の平によく伸ばしてから「髪」そのものになじませます。

香水使用時の注意点

香水(EDTやEDC)を肌につけた後、こすり合わせるのは厳禁です。摩擦熱でトップノートの繊細な柑橘系の香りが飛んでしまい、すぐにミドルノートやベースノートの重い香りになってしまいます。必ず「叩き込む」か「スプレーしてそのまま乾かす」ようにしてください。

3. 最も粋な使い方は「レイヤリング(重ね付け)」
ポーチュガルのエコシステムを最も楽しむ方法は、やはり「レイヤリング」です。例えば、お風呂上がりにアフターシェーブローションで肌を整え、ヘアトニックで頭皮をケアし、最後にEDTを手首にワンプッシュする。このように複数のアイテムで香りを重ねることで、香りが肌や髪に馴染み、「香水をつけている」のではなく「その人自身からほのかに良い香りがする」という、非常に自然で奥行きのある状態を演出できます。これこそが、大人の男性、そして香りの上級者が目指すべき、究極の纏い方です。

総括:「ポーチュガル おじさん」は、時代が追いついた永遠の定番

この記事のまとめです。

  • 「ポーチュガル おじさん」は懐かしさと親しみを込めた愛称である
  • 日本での「おじさん」イメージは柳屋本店の意図的な戦略であった
  • 40-60代男性をターゲットに「魅力的に年を重ねた男性」を演出した
  • アイコンには70-80年代『ポパイ』のモデル木村東吉を起用した
  • 4711「オリジナル」と「ポーチュガル」は全く別の香水である
  • 「オリジナル」は1792年誕生のシトラス・アロマティックである
  • 「ポーチュガル」は1982年誕生のシトラス・シプレである
  • シプレとはシトラスとモス/ウッディの対比が魅力の香調である
  • ポーチュガルの名はオレンジを欧州に伝えたポルトガル人に由来する
  • 香りはオレンジからスパイシーなコリアンダーへと変化する
  • ベースはモス、ムスク、ウッディな大人の深みを持つ
  • 香水だけでなくヘアトニック、アフターシェーブも展開している
  • この「グルーミング・エコシステム」が男性の生活に密着した
  • 本国の定義や専門家の分類では「ユニセックス」である
  • 世代や性別を超え、今こそ再評価されるべきクラシックな名香である
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この記事を書いた人

香水やアロマなど香りを楽しむことが好きなブロガー。
香文化などをみんなに、わかりやすくお届けします。

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