ディプティックの最高傑作の一つとして名高い「フルール ドゥ ポー(Fleur de Peau)」。フランス語で「肌の花」を意味するこの香りは、その名の通り、一度香ると忘れられないほどの優しさと、内側から滲み出るような官能性を秘めています。
しかし、世界的な人気のあまり入手困難な時期があったり、価格改定によりリピートを躊躇してしまったりすることもあるでしょう。
「フルール ドゥ ポー 似てる香水」と検索してこの記事にたどり着いたあなたは、きっとあの柔らかくも神秘的なムスクの虜になっているはずです。今回は、フレグランスマイスターである私が、その複雑な香りの構成を徹底的に紐解きながら、あなたの「運命の代わりの一本」となり得る名香たちを厳選してご紹介します。
単なるコピー商品ではなく、それぞれのブランドが誇る「肌の香り(スキンセント)」の物語をお楽しみください。
この記事のポイント
- フルール ドゥ ポーの核心である「アンブレット」と「アイリス」の役割を解説
- 世界中で愛される「スキンセント(肌の香り)」の代表格と比較
- 予算やシーンに合わせて選べる代替フレグランス5選を紹介
- 単なる代用品ではない、それぞれの香水が持つ独自の物語と魅力
フルール ドゥ ポーの魅力と香りの構成を徹底解剖
- 伝説の愛を表現した唯一無二の「肌の香り」
- アイリスとムスクが織りなすパウダリーな魔法
- 似ている香水を探すための3つの重要ポイント
- どんなシーンや季節にマッチする香りなのか
伝説の愛を表現した唯一無二の「肌の香り」

ディプティックのフレグランス誕生50周年を記念して2018年に発表された「フルール ドゥ ポー(Fleur de Peau)」は、単なる香水という枠を超え、一つの芸術作品として多くの愛好家を魅了し続けています。
この香りのインスピレーションの源となっているのは、古代ギリシャ神話に登場する「プシュケとエロスの愛」の物語です。神話の中で描かれる、数々の試練を乗り越えた末に結ばれる二人の愛。
その官能的でありながらも純粋な抱擁、そして神々しいまでの肌の触れ合いを、香りとして具現化したのがこの作品なのです。
私が初めてこの香りをムエット(試香紙)ではなく、自分の手首に乗せた瞬間の感動は今でも鮮烈に覚えています。トップノートからラストノートへの変化が驚くほど滑らかで、まるで香水をつけているのではなく、自分自身の肌が元々極上の香りを放っているかのような錯覚に陥ります。これこそが、「肌の花」を意味するこの香水が持つ最大の魔法でしょう。
現代の香水市場には人工的で鋭利な香りも多く存在しますが、フルール ドゥ ポーはその対極にあります。人間味あふれる温もりと、どこか懐かしさを感じさせる香調は、纏う人の内面の美しさを引き出し、周囲の人々にも深い安心感を与えます。
ただ「良い匂い」がするだけでなく、記憶の奥底に触れるようなエモーショナルな体験を提供してくれる点こそが、この香水が唯一無二であり、代替不可能と言われる所以なのです。
香道Lab.アイリスとムスクが織りなすパウダリーな魔法


フルール ドゥ ポーの香りの核を構成しているのは、希少な「ムスク」と高貴な「アイリス(アヤメ)」の絶妙なブレンドです。しかし、ここで注目すべき最も重要な香料は、実はアンブレットシードです。ハイビスカスの一種から抽出されるこの植物性ムスクは、非常に高価で希少な香料として知られています。アンブレットシードは、洋梨のようなフルーティーな甘さと、人肌のような温かみのあるムスクの香りを同時に併せ持つ、非常に複雑で魅力的な素材です。
調香師のオリヴィエ・ペシューは、このアンブレットシードを主役に据え、そこにパウダリーで知的な印象を与えるアイリスを重ね合わせました。一般的にムスク系の香水は重たく、動物的な印象になりがちですが、フルール ドゥ ポーでは、トップノートに配置されたピンクペッパーとマンダリンの弾けるようなスパイシーさが全体を引き締め、軽やかさとモダンさを与えています。
時間が経つにつれて、アイリスの粉っぽさとムスクが肌に溶け込み、まるで洗いたてのリネンや、上質なコットンのシャツに顔をうずめた時のような清潔感と、ほのかな色気が漂います。
この「パウダリーなのに古臭くない」「甘いのにベタつかない」という絶妙なバランスこそが、多くの人が似ている香りを探してもなかなか見つからない、高度な調香技術の証なのです。
肌に乗せて数時間後、ふとした瞬間に香る残り香(ドライダウン)の美しさは、香水愛好家たちを唸らせる完成度を誇ります。
| 香調の段階 | 香りの特徴 |
|---|---|
| トップ | ピンクペッパー、マンダリンによる弾けるような輝き |
| ミドル | アイリス、ローズによるパウダリーで高貴なフローラル |
| ラスト | ムスク、アンブレット、アンバーグリスによる官能的な肌の香り |
似ている香水を探すための3つの重要ポイント


フルール ドゥ ポーに代わる香り、あるいは似ている香りを探す際には、単に「ムスクが入っているから」という理由だけで選ぶと失敗してしまうことがあります。なぜなら、ムスクには動物的な野性味のあるものから、石鹸のような清潔なもの、甘いお菓子のようなものまで、多種多様なタイプが存在するからです。
私がおすすめする、失敗しないための選び方のポイントは以下の3点です。
第一に、「アンブレット(Ambrette)」または「植物性ムスク」が含まれているかを確認することです。フルール ドゥ ポー特有の、あの洋梨のような瑞々しさと人肌感を再現するには、動物性ムスクではなく、このアンブレットの存在が不可欠です。これが含まれているだけで、香りの方向性がグッと近づきます。
第二に、「パウダリーな要素(アイリス、ヘリオトロープ、バイオレットなど)」が含まれているかを見ることです。これにより、香りに奥行きと柔らかさ、そして知的な印象が加わります。単調な石鹸の香りではなく、高級感のある化粧品やフェイスパウダーのようなニュアンスが生まれ、大人の女性・男性に相応しい深みが出ます。
そして第三に、最も重要なのが「スキンセント(Skin Scent)」として設計されているかどうかです。スキンセントとは、香水を強く主張させるのではなく、つける人の体臭や体温と混じり合って完成するタイプの香りを指します。主張が激しいフローラルブーケやウッディではなく、あくまで「肌の延長線上」にある香りを選ぶことで、フルール ドゥ ポーが持つあの親密な雰囲気に近づくことができます。
- キー香料: アンブレットシードが含まれているかチェック
- 質感: アイリス由来のパウダリー感(粉っぽさ)があるか
- コンセプト: 「肌馴染み」を重視したスキンセントであるか
どんなシーンや季節にマッチする香りなのか


フルール ドゥ ポー、およびその系統のスキンセント系香水が持つ最大の強みは、その圧倒的な汎用性(Versatility)にあります。季節を問わず、一年中快適に使えるオールラウンダーですが、特にその真価を発揮するのは、春先の少し肌寒い日や、秋から冬にかけての空気が澄んだ季節です。体温によって香りが立ち上がるタイプのムスクは、ニットやコートの下からふわりと香ることで、温もりを感じさせ、相手に「もっと近づきたい」と思わせる心理的効果があります。
シーンとしても、オフィスからデート、リラックスタイムまで幅広く対応します。清潔感があるため、ビジネスシーンでも周囲に不快感を与えることはまずありません。むしろ「きちんとしている人」「清潔感のある人」という好印象を与えるでしょう。
また、夜のデートや寝香水(ベッドタイムフレグランス)としても極めて優秀です。攻撃的なセクシーさではなく、包容力を感じさせる優雅な色気があるため、パートナーと過ごす親密な時間に最適です。
さらに言えば、この系統の香りは「自分のために纏う香り」としても非常に優れています。テレワーク中や、一人で読書をする休日の午後など、気分を落ち着けたい時にワンプッシュすることで、精神的な安定とリラックス効果をもたらしてくれます。
TPOを選ばず、常に自分に寄り添ってくれる「お守り」のような存在として活躍してくれることでしょう。
おすすめの付け方
この手の香りは拡散力が穏やかなため、手首や首筋だけでなく、お腹や腰回りに仕込むのがプロの裏技。体温で温められ、全身から柔らかく香りが立ち上ります。
フルール ドゥ ポーに似てる香水厳選おすすめ5選
- Glossier You:SNSで話題の「あなた自身の香り」
- LE LABO Another 13:都会的で洗練されたムスク
- CLEAN Reserve Skin:温もりを感じる甘美な肌触り
- Maison Margiela Lazy Sunday Morning:清潔感の極み
- ZARAやプチプラで探すムスク系の掘り出し物
Glossier You:SNSで話題の「あなた自身の香り」


フルール ドゥ ポーに似ている香水として、世界中のフレグランスコミュニティで最も頻繁に名前が挙がり、圧倒的な支持を得ているのが、アメリカ発のコスメブランドGlossier(グロッシアー)の代表作「Glossier You」です。
「You」という名前が示す通り、この香水の主役はあくまで「あなた自身」。つける人の肌のph値や体温によって香りが変わるというコンセプトで作られており、究極のスキンセントとして2025年現在もカルト的な人気を誇ります。
香りの構成を見ると、フルール ドゥ ポーとの共通点が非常に多いことに驚かされます。トップにはピンクペッパーがスパイシーに弾け、ベースにはアンブレットシード(植物性ムスク)、アンブロクサン、そしてアイリスの根が使われています。この構成要素の類似性が、両者が「双子」のように似ていると言われる最大の理由です。実際に肌に乗せると、フルール ドゥ ポーにあるようなパウダリーで温かいムスクの香りが広がりますが、Glossier Youの方がよりカジュアルで、若々しく、とっつきやすい印象を受けるかもしれません。
フルール ドゥ ポーが神話をモチーフにした芸術的な深みや重厚感を持つのに対し、Glossier Youは「洗いたてのスウェットシャツ」のような、気取らない日常の心地よさを提供してくれます。
価格もディプティックに比べれば比較的手頃であり、日常使いの代用品として、あるいは「カジュアルな日のフルール ドゥ ポー」として使い分けるのに最適な一本です。日本国内では店舗展開が限られていますが、その人気ゆえに並行輸入などで入手可能です。
ただし偽物も多いため、信頼できるショップ選びが重要です。
LE LABO Another 13:都会的で洗練されたムスク


もしあなたが、フルール ドゥ ポーの「肌馴染みの良さ」は好きだけれど、もう少し都会的で、エッジの効いたモダンな香りが欲しいと感じているなら、LE LABO(ル ラボ)の「Another 13(アナザー13)」が運命の相手かもしれません。
この香水は元々、雑誌『AnOther Magazine』とのコラボレーションとして限定発売されましたが、そのあまりの人気に定番化されたという伝説を持っています。
Another 13の特徴は、天然香料と人工香料の巧みな融合にあります。アンブロクサンという合成ムスクを主軸に、ジャスミンやモス、そしてやはりここでもアンブレットシードが使用されています。フルール ドゥ ポーのようなパウダリーなアイリス感は控えめですが、その代わりに「アイソイースーパー(Iso E Super)」などの分子系香料が、透明感のあるドライなウッディムスクを醸し出します。
香りの印象としては、フルール ドゥ ポーが「柔らかい毛布」だとすれば、Another 13は「糊の効いた白いシャツ」や「金属とガラスでできたモダンな建築」を思わせます。非常に洗練されており、甘さは控えめ。しかし、体温と混ざり合うことで現れる独特のフェロモンのような色気は、ディプティックのそれに通じるものがあります。人と被りたくない、一歩先を行くおしゃれを楽しみたいという方にとって、この香りは間違いなく投資する価値のある傑作です。価格帯は高めですが、その持続性と拡散力の高さも魅力の一つです。
CLEAN Reserve Skin:温もりを感じる甘美な肌触り


「清潔感」を追求するブランドとして名高いCLEAN(クリーン)の中でも、特にフルール ドゥ ポー好きにおすすめしたいのが、上級ラインである「Reserve(リザーブ)」コレクションの「Skin(スキン)」です。
通常ラインの「Skin」もありますが、こちらの「Reserve Skin」の方がより香料の質が高く、深みがあり、サステナブルな素材を使用しているため、大人の代用として選ぶならこちらが正解です。
この香水の最大の特徴は、塩気のあるプラリネ(ナッツの砂糖菓子)の甘さと、温かいムスクの融合です。フルール ドゥ ポーがアイリスによる「粉っぽい清潔感」を持つのに対し、Reserve Skinは「人肌の甘みと温もり」にフォーカスしています。つけた瞬間に感じるのは、お風呂上がりのような湿り気を帯びた温かさと、愛する人に抱きしめられた時のような絶対的な安心感です。
構成にはムスク、トンカビーン、そして塩キャラメルのようなグルマンの要素が含まれていますが、決してお菓子のように甘ったるくなることはありません。あくまで肌に馴染む、ほのかな甘さです。
フルール ドゥ ポーの持つ「優しさ」の側面を特に愛している方や、寝る前に心を安らげたい方には、このReserve Skinがもたらす包容力が深く刺さるはずです。また、レイヤリング(重ね付け)のベースとしても優秀で、他のフローラル系やシトラス系の香水と組み合わせることで、香りに深みと持続性を持たせることができます。
Maison Margiela Lazy Sunday Morning:清潔感の極み


「レプリカ」シリーズで不動の人気を誇るMaison Margiela(メゾン マルジェラ)から、「Lazy Sunday Morning(レイジーサンデーモーニング)」をご紹介しないわけにはいきません。
フルール ドゥ ポーとは香料の構成において少し違いがありますが、「清潔感のあるムスク」「リネン」「肌の香り」というキーワードで検索している方にとっては、避けて通れない王道の選択肢です。
この香りが描くのは、日曜日の朝、洗い立てのシーツに包まれて過ごす至福の時間です。フルール ドゥ ポーがアンブレットとアイリスの少し重厚なパウダリーさを持つのに対し、レイジーサンデーモーニングは、ホワイトムスクにスズラン(リリーオブザバレー)や洋梨のみずみずしさを加えた、より透明感のある仕上がりになっています。
光が差し込む明るい部屋を連想させるような、キラキラとした清潔感が特徴です。
「似ているか?」と問われれば、香りの「重さ」は異なります。フルール ドゥ ポーの方がより重心が低く、センシュアル(官能的)です。一方、レイジーサンデーモーニングはより軽やかで、フレッシュです。しかし、どちらも「清潔な肌」を演出するというゴールは同じです。もしフルール ドゥ ポーが少し「粉っぽすぎる」あるいは「重すぎる」と感じる夏場などのシーンでは、このレイジーサンデーモーニングが完璧な代替案、あるいは使い分けのパートナーとなるでしょう。
| 特徴 | フルール ドゥ ポー | レイジーサンデーモーニング |
|---|---|---|
| 主役 | アイリス・アンブレット | ホワイトムスク・スズラン |
| 印象 | パウダリー・官能的 | フレッシュ・清潔 |
| 重さ | ミディアム〜重め | 軽やか |
| 季節 | 秋・冬・春 | 春・夏・秋 |
ZARAやプチプラで探すムスク系の掘り出し物


最後に、もう少し手軽に試せる価格帯から、フルール ドゥ ポーのニュアンスを感じられるアイテムを探してみましょう。特に注目すべきは、ファストファッションブランドZARA(ザラ)のフレグランスラインです。
ZARAはジョー・マローン氏など著名な調香師を起用しており、価格以上のクオリティを持つ香水が頻繁に登場します。商品の入れ替わりが激しいのが難点ですが、「ムスク」や「カシミア」と名のつくアイテムは要チェックです。
過去には「A Perfume in Rose」などがGlossier Youやフルール ドゥ ポーに似ていると話題になりましたが、ZARAは商品の回転が速いため、現在は入手できないこともあります。しかし、「ヌード系」「スキン系」のコレクションは定期的にリリースされています。特に、アイリスやアンブレットが含まれていなくても、サンダルウッドやホワイトムスクをベースにした柔らかい香りは、フルール ドゥ ポーが好きな方の好みに合うことが多いです。店頭で「ムスク」の文字を見つけたら、まずは試香してみることを強くおすすめします。
また、ドラッグストアやバラエティショップで手に入るボディミストの中にも、優秀なムスク系が存在します。例えば、フィアンセやボディファンタジーといったブランドの中にも、清潔感のあるソープやムスクの香りがあります。
これらは香りの持続時間は短いですが、その分気軽に付け直すことができ、強い香水が苦手な環境ではむしろ重宝します。「フルール ドゥ ポーのような清潔感を、10分の1の価格で楽しむ」という視点であれば、これらのプチプラアイテムも立派な選択肢の一つと言えるでしょう。
香りは値段だけで決まるものではありません。自分の肌で試し、心がときめくかどうかが最も重要なのです。
購入時の注意
ZARAなどのファストファッション系フレグランスは、予告なく廃盤になることが多々あります。「これだ!」と思ったら複数買いしておくのが鉄則です。
総括:フルール ドゥ ポーに似てる香水選びで、あなたの魅力を開花させる「肌の物語」を紡ぐ
この記事のまとめです。
- フルール ドゥ ポーはギリシャ神話をモチーフにした「肌の花」を意味する名香
- 香りの核は希少なアンブレットシード、アイリス、ムスクの絶妙な調和にある
- 似ている香りを探す鍵は「アンブレット」「パウダリー」「スキンセント」の3要素
- Glossier Youは構成が酷似しており、最も近い代替候補として世界的に人気
- LE LABO Another 13はより都会的でドライな印象を与え、洗練された個性を演出する
- CLEAN Reserve Skinはプラリネの甘みがあり、温かさと包容力を求める人に最適
- Maison Margiela Lazy Sunday Morningはよりフレッシュで、明るい清潔感が特徴
- 季節やシーンに合わせて、本家と似ている香水を使い分けるのが賢い楽しみ方
- ZARAなどのプチプラブランドでも、ムスク系の良質な香りが発掘できる可能性がある
- スキンセントは体温や体臭と混ざることで完成するため、必ず肌に乗せて試すべき
- フルール ドゥ ポーの魅力は単なる清潔感だけでなく、内側から滲み出る官能性にある
- 似ている香水を選ぶことで、コストを抑えつつ日常的に上質なムスクを楽しめる
- 自分のライフスタイルに合った「第二の肌」となる香りを見つけることが重要
- 香水は記憶とリンクするため、新しい香りへの挑戦は新しい自分との出会いになる
- 最終的にはブランドや価格にとらわれず、自分の心が落ち着く香りを選ぶのが正解










