「立てば芍薬、座れば牡丹」という言葉でも知られる美しい花、ピオニー。その優雅な姿と魅惑的な香りは、古くから多くの人々を惹きつけてきました。この記事では、フレグランスマイスターである私が、ピオニーとは何か?という基本から、その歴史、花言葉に込められた想いを深く掘り下げていきます。さらに、ピオニーの香りがもたらす心理効果や、あなたにぴったりの香水選びのヒント、人気ブランド、調香の秘密、そして香りで彩る豊かなライフスタイルまで、ピオニーの全てをご紹介。この記事を読めば、きっとあなたの香りの世界はもっと豊かになるはずです。
この記事のポイント
- ピオニーの歴史と和名、バラとの香りの違い、そして花言葉に込められた情緒を理解できる
- ピオニーの香りがもたらす心理効果と、日常や特別なシーンでの活用法がわかる
- 運命のピオニー香水を選ぶためのヒントや、人気ブランド、調香の秘密を知ることができる
- ピオニーの香りをまとい、自身のライフスタイルを豊かに彩るヒントが得られる
ピオニーの魅力:歴史と香りの基本
- ピオニーとは?和名と歴史
- 故事成語が語る美の象徴
- 香りの特徴:バラとの違い
- 花言葉に込められた想い
ピオニーとは?和名と歴史

ピオニー(Peony)は、ボタン科ボタン属に分類される植物の総称です。主に「牡丹(ボタン)」と「芍薬(シャクヤク)」を指し、英語圏ではこれら両方を「Peony」と呼びます。日本でも「ピオニー」という言葉が、芍薬や牡丹の総称として使われることがありますね。学名としては、ボタン属が *Paeonia*、牡丹が *Paeonia suffruticosa*、芍薬が *Paeonia lactiflora* となっています。大きな違いとして、牡丹は木本性(落葉低木)であるのに対し、芍薬は草本性(多年草)であるという点が挙げられます。
この美しいピオニーの原産地は、中国、シベリア南部、モンゴル、朝鮮半島など、北東アジア地域に広がっています。特に中国では約2000年以上も前から薬用として栽培されてきた歴史があり、日本へは平安時代に芍薬が薬用植物として伝わりました。江戸時代には、日本において芍薬の多様な園芸品種が育成され、その美しさが一層際立つようになりました。1800年代初頭には、中国からヨーロッパへ観賞用の芍薬が輸入され、現地で大きな人気を博したと言われています。
香道Lab.文化的な側面を見てみましょう。牡丹は中国において「富貴花」「百花王」「花王」などと呼ばれ、皇帝や貴族に珍重されてきました。その姿は、地位や高貴さの象徴として扱われたのです。牡丹には他にも「富貴草」「花神」といった別名もあります。一方、芍薬には「夷薬(エビスグスリ)」「夷草(エビスグサ)」「花の宰相」「花相」などの別名があり、日本では女性の美しさを形容する言葉として「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という表現が広く親しまれていますね。
芍薬の花言葉
芍薬の花言葉には「恥じらい」「はにかみ」「謙遜」「つつましさ」「幸せな結婚」といったロマンチックな言葉が多くあります。これらは、夕方になると花が閉じる性質や、恥じらい屋の妖精が芍薬に隠れたというイギリスの民話に由来すると言われています。英語圏には「blush like a peony(シャクヤクのように頬を赤らめる)」という慣用句があることからも、その繊細な美しさがうかがえます。
また、ピオニーは薬用としても古くから重宝されてきました。牡丹の根皮は「牡丹皮(ボタンピ)」として漢方薬に利用され、鎮痛、鎮静、消炎作用があるとされています。芍薬の根も「芍薬(シャクヤク)」として漢方薬に用いられ、鎮静、鎮痛、婦人薬など、多岐にわたる効能が期待されているのです。
故事成語が語る美の象徴


芍薬は、その豪華で優美な姿から古くより美の象徴とされてきました。
「花の王」や「花の宰相」と称されるほど、その存在は際立っていますね。
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」
特にこの故事成語は、日本の文化に深く根ざし、美しい女性の立ち居振る舞いを形容する際に用いられてきました。また、白い芍薬の花言葉は「幸せな結婚」であり、芍薬全体としては「清純」という花言葉が与えられています。これらは、その清楚でありながらも華やかな美しさを表しているのでしょう。
豆知識:故事成語のもう一つの側面
興味深いことに、この故事成語には、東洋医学における生薬の適切な使い方を示すものだったという説もあります。芍薬には、イライラして気が立っている状態を鎮める作用があるとされ、その効能からこの言葉が生まれたとも言われているのです。
西洋でも芍薬は美の象徴として認識されており、英語には「Blush like a peony」(芍薬のように顔を赤らめる)という慣用句が存在します。これは、恥じらいや謙遜から深く顔を赤らめる様子を表す言葉です。
文学の世界においても、泉鏡花が長編小説『芍薬の歌』を著すなど、芍薬は多くの人々に愛され、その美しさが語り継がれてきました。
香りの特徴:バラとの違い


ピオニーの香りは、そのみずみずしさと上品な甘さが特徴として挙げられます。
「5月のバラ」と称される理由
この優美な香りは、しばしばバラの香りと似ていることから「5月のバラ」とも称され、多くの人々に愛されています。しかし、バラの華やかな香りと比較すると、ピオニーはより爽やかで透明感があり、甘さが控えめである点が特徴的です。その繊細ながらも奥行きのある香りは、身につける女性に優雅で洗練された印象を与えてくれるでしょう。
注意:ピオニーの精油抽出は困難
香りの世界において、ピオニーは特別な存在です。精油を直接抽出することが非常に難しいため、香水では様々な香料を巧みにブレンドし、その魅惑的な香りを再現しています。調香師たちは、この花が持つ独特のニュアンスを表現するために、多大な情熱と技術を注ぎ込んでいるのです。
香りの構成、いわゆる香りのピラミッドにおいては、ピオニーは主にミドルノート、またはハートノートとして使用されることが多いです。これは、香りの中心として、フレグランス全体に深みと奥行きを与える役割を担っていることを意味します。
花言葉に込められた想い


ピオニーには、その美しさだけでなく、奥深い花言葉が秘められています。代表的なものとしては、「恥じらい」「はにかみ」「誠実」「謙遜」「つつましさ」「威厳」といった言葉が挙げられますね。さらに、「満ち足りた心」「幸せな結婚」「美しい心」といった、心温まる意味合いも持ち合わせているのです。
特に「恥じらい」や「はにかみ」という花言葉は、ピオニーの神秘的な性質に由来すると言われています。夕方になるとそっと花を閉じる姿や、恥ずかしがり屋の妖精が隠れて花が赤くなったというイギリスの古い民話が、これらの美しい言葉の背景にあるのですね。
色で変わるピオニーの花言葉
- 情熱的な赤色のピオニーは「誠実」「はにかみ」「荘厳」「威厳」
- 可憐なピンク色のピオニーからは、「はにかみ」「恥じらい」
- 清らかな白色のピオニーは「幸せな結婚」「純潔」「思いやり」



ピオニー香水:選び方と活用法
- 心惹かれる心理効果とシーン
- 運命の香水選びとブランド
- 調香の世界と似た香り
- 香りが彩るライフスタイル
心惹かれる心理効果とシーン


ピオニーの香りは、私たちの心と体に優しく寄り添う、多岐にわたる心理効果を秘めています。まず、その芳しい香りは、副交感神経の活動を穏やかに高め、同時に交感神経の活動と心拍数を落ち着かせます。
ピオニーの香りがもたらす心理効果
- 深いリラックス効果をもたらし、心身ともに安らぎを感じられる
- ネガティブな感情をそっと和らげ、気分をより活発で前向きな方向へと導く
- 内側から湧き上がるような幸福感や満足感を高める
- 健康な脳機能を助け、記憶力や認知能力の向上に寄与する可能性
このようなピオニーの香りの特性は、様々なシーンで私たちの魅力を自然に引き出してくれます。軽やかで上品、そして清潔感あふれるその印象は、
ピオニー香水が活躍するシーン
- オフィスや通勤時といったビジネスシーン
- 普段使いの香りとして最適
- デートや初めてお会いする方との会合(洗練された好印象を与える)
- 春から初夏にかけての季節感を演出
洗練された装いに、さりげなく上質な「香りのアコード」を添えるような感覚です。優しさと品格が、あなたの魅力を一層際立たせます。甘すぎず、どこか爽やかさを感じさせるピオニーは、特に春から初夏にかけての季節感を演出するのにぴったり。新しい季節の訪れとともに、ピオニーの香りをまとうことで、より一層気分が高まるはずです。
運命の香水選びとブランド
運命の香水を見つける旅は、心を豊かにする特別な体験です。今回は、可憐なピオニーを主役にした香水の魅力と、あなたにぴったりの一本を見つけるヒントをご紹介します。
ピオニーの香りは、バラに似た華やかさがありつつも、爽やかでみずみずしい透明感あるフローラルノートが特徴です。女性らしくエレガントな印象を与え、ゲラニオールやリナロールといった香気成分が含まれることもあります。香水においては、花からの直接抽出が難しいため、複数の香料をブレンドし、その魅力的な香りを再現することが多いのです。
ピオニーの魅力を堪能できる人気ブランド
- ジョーマローンの「ピオニー&ブラッシュ スエード コロン」
- クリスチャンディオールの「ミス ディオール ブルーミング ブーケ」
- ランバンの「ジャンヌ・ランバン」(ミドルノート)
- SHIROの「ピオニー オードパルファン」
- イヴ・サンローランの「モン パリ フローラル」「モン パリ オーデパルファム」(ミドルノート)
- ドルチェ&ガッバーナの「ドルチェ ピオニー」
- ロクシタンの「ピオニー オードトワレ」
運命の香水を見つけるためのヒント
- 香りの種類(フローラル、シトラス、ウッディなど)から選ぶ。普段のシャンプーや柔軟剤の香りを参考にすると好みの系統が見つけやすい
- なりたい印象やビジネス、リラックスなどのシーン、季節(春、夏、秋、冬)に合わせて選ぶ
- 香りの持続時間は香料濃度(賦香率)で異なり、パルファン、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロンの順で短くなる
- 実際に試す際は、ムエット(試香紙)で第一印象を確認後、肌につけて香りの変化(トップノート、ミドルノート、ラストノート)を丁寧に確認する
- 嗅覚疲労を避けるため、一度に試すのは数種類に絞るのが賢明
- オンラインの香水診断やフレグランスファインダーも活用する
- 流行や他人の評価に惑わされず、ご自身の「ときめき」を信じて直感で選ぶ
調香の世界と似た香り


ピオニー(芍薬)の香りは、バラに似たみずみずしく上品な甘さが特徴的なフローラルノートとして知られています。この香りには、バラに含まれるゲラニオールやラベンダーに含まれるリナロールといった香気成分が含まれているんですよ。しかし、バラの香りよりも爽やかで透明感があり、甘さが控えめな点がピオニーならではの魅力といえるでしょう。
開花時期が5月~6月頃であることと、そのバラに似た香りから、ピオニーは「5月のバラ」と呼ばれることもあります。
注意:「ローズ・ド・メイ」との混同
ただ、「ローズ・ド・メイ」は5月にフランスのグラース地方で収穫される希少なバラの品種を指し、ピオニーの香りとは異なりますので、混同しないようにしてくださいね。
ピオニーの花から直接精油を抽出することは、香気成分の繊細さや低い抽出率のため、非常に難しいとされています。そのため、香水の世界では、様々な香料をブレンドした調合香料、いわゆる「アコード」を用いてピオニーの香りが再現されているのです。
アコードとしてのピオニー
調合香料としてのピオニーは、その繊細さ、フレッシュさ、ほのかな甘さ、そしてロマンチックでエレガントな特徴から、香水業界で絶大な人気を誇ります。
ピオニーの香りは、フローラル、フルーティー、グリーンのノートを併せ持ち、香りの多様性がある点も魅力です。そのみずみずしく上品な甘さから「フレッシュフローラル」の香調に分類されます。
香調:フレッシュフローラルとフローラルグリーン
- フレッシュフローラル:生花のような清らかな香りを指し、柑橘系のフレッシュさと花の甘さを兼ね備えています。一般的には、トップノートにベルガモットなどの柑橘系、ミドルノートにローズやジャスミンなどのフローラル、ベースノートにムスクやウッディノートを持つことが多いですね。
- フローラルグリーン:花の香りに草木のような爽やかなグリーンノートを加えたもので、草木が生い茂る森林や花々が咲き乱れる草原を思わせる、自然の息吹を感じさせる香りが特徴です。爽やかでエレガントな印象を与え、特に春や夏にぴったりの香調といえるでしょう。
香りが彩るライフスタイル


ピオニーの香りは、私たちの日常に優雅な彩りを添えてくれます。甘く華やかでありながら、同時に爽やかさを感じさせるフローラルノートは、まさに香りの芸術と言えるでしょう。特に初夏から夏にかけては、その軽やかさが際立ち、季節感をより深く感じさせてくれます。もちろん、その透明感あふれるフローラルな香りは、年間を通して(F3)お楽しみいただくことが可能です。
日常使いしやすいのも、ピオニーの香水が愛される理由の一つです。甘すぎず、みずみずしい爽やかさを特徴としており、バラの香りに近いながらも、より軽やかな印象を与えてくれます。春や初夏の新たなスタートにもぴったりな、清々しい香りです。
香水だけでなく、ピオニーの香りはライフスタイル全般に取り入れることができます。お部屋に香りを広げれば、エレガントで上品な雰囲気を演出してくれるでしょう。
ピオニーの香りで日常を豊かに
- ディフューザーやファブリックミスト、さらには車用フレグランスなど、様々な形で香りを楽しむことができる
- 特にファブリックアイロンミストは、衣類をケアしながらお気に入りの香りに包まれる素敵なアイテムである
- バスタイムには、ピオニーの香りのボディケア製品(ボディシャンプー、ボディクリーム、ボディミルク、ハンドクリームなど)をおすすめする
- 香りに包まれてリラックスしながら、肌に潤いを与えることができる



総括:ピオニーとは?歴史と香りの奥深さに触れるフレグランスマイスターの提案
この記事のまとめです。
- ピオニーは、牡丹と芍薬を指すボタン科ボタン属の植物の総称である
- 牡丹が木本性である一方、芍薬は草本性という違いがある
- ピオニーは中国で2000年以上前から薬用として栽培されてきた歴史がある
- 「Peony」という名前はギリシャ神話の医の神アスクレピオスの弟子に由来するとされる
- 中国において牡丹は「富貴花」「百花王」と呼ばれ、地位や高貴さの象徴として珍重されてきた
- 芍薬の花言葉には「恥じらい」「はにかみ」「謙遜」「つつましさ」「幸せな結婚」などがある
- 「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」は、美しい女性の立ち居振る舞いを形容する故事成語である
- ピオニーの香りは、みずみずしさと上品な甘さが特徴で、バラより爽やかで甘さが控えめである
- ピオニーの精油を直接抽出することは非常に難しいため、香水では調合香料(アコード)でその香りを再現している
- ピオニーの香りは主にミドルノートやハートノートとして使用され、香りの中心として深みを与える
- 赤色のピオニーは「誠実」、ピンク色は「はにかみ」、白色は「幸せな結婚」という花言葉を持つ
- ピオニーの香りは副交感神経の活動を高め、リラックス効果や幸福感、認知能力の向上に寄与する
- オフィスやデート、普段使いなど、清潔感と女性らしさを演出したい様々なシーンでピオニーの香りが活躍する
- ジョーマローンやクリスチャンディオール、SHIROなど、多くの人気ブランドからピオニー香水が展開されている
- ピオニーの香りは香水に留まらず、ディフューザーやボディケア製品で日常に優雅な彩りを添えることができる










