こんにちは。フレグランスマイスターのKaitoです。香りの世界に足を踏み入れたばかりの方から、自分らしい一本を探している方まで、多くの方が一度は「ネロリとベルガモット、どう違うの?」という疑問を持たれたことがあるでしょう。どちらも「柑橘系」として紹介されることが多く、その響きは似ていますが、この二つは根本的に異なる、まったく別の個性を持つ香りです。その最大の違いは、ネロリが「花」のエッセンスであり、ベルガモットが「果皮」のエッセンスであるという点にあります。この記事では、単なる香りの違いを超え、二つの香料が持つ植物学的な真実、ネーロラ公妃に由来する高貴な物語、アールグレイティーとの深い繋がり、そして「奇跡の木」とも呼ばれるビターオレンジの秘密まで、深く掘り下げていきます。トム・フォードやル・ラボといった名香の分析を通じて、あなたがTPOや求める心理効果に合わせて「運命の一本」を選び抜くためのお手伝いをします。この香りの旅路の終わりには、あなたはもうネロリとベルガモットの違いに迷うことはないでしょう。
- ネロリは「花(ビターオレンジの花)」、ベルガモットは「果皮(ベルガモットオレンジの皮)」から採れる、出自が異なる香料である
- ネロリはフローラルでグリーンな香り、ベルガモットはタルト(酸味)でスパイシーな香りという明確な違いがある
- ビターオレンジの木一本から、ネロリ、プチグレン、オレンジブロッサムなど異なる香料が生まれる
- ネロリは「鎮静」、ベルガモットは「高揚」と、心理的な効果や適したTPO(シーン)が異なる
ネロリとベルガモットの決定的違い:香りの源泉と高貴な物語
- 香りの第一印象:「花」と「果皮」の二重奏
- 植物学の真実:ネロリとベルガモットの「出自」の違い
- 専門家の視点:ビターオレンジという「香りの奇跡の木」
- 歴史が語る物語:ネーロラ公妃と「ケルンの水」
香りの第一印象:「花」と「果皮」の二重奏

まず、あなたの鼻が何を感じるか、その「第一印象」から解き明かしていきましょう。ネロリとベルガモットは、どちらも「シトラス」のグループに分類されますが、その香りのプロファイル(Odor profile)は全く異なります。
ネロリ (Neroli) の香りは、一言でいえば「シトラスとフローラルの二重奏」です。トップノート(香りの第一印象)として、まず柑橘系の軽やかさとわずかな苦味を感じます。しかし、それはすぐに蜂蜜のような甘い花の香り(フローラル・ファセット)へと移り変わっていきます。専門的に言えば、ネロリの香りは「シトラスでありながら、浄化するようなアロマティックなグリーンの側面と、スパイシーな側面」を併せ持ちます。それは、ただのオレンジの香りではなく、春先に咲き誇るオレンジの花、その花粉、蜜、そして緑の茎や葉までをも丸ごとボトルに詰め込んだような、複雑で気品のある香りです。
一方、ベルガモット (Bergamot) は、もっと直接的で、弾けるような「シトラス」です。ですが、レモンやオレンジのように単純な「甘酸っぱさ」ではありません。ベルガモットのプロファイルは「ビター(苦味)&タルト(酸味)」が特徴です。エレガントで軽やかでありながら、他の柑橘にはない「マイルドなスパイシーさ」と、果実やアロマティックな要素が織りなす複雑さを持ちます。この香りがピンと来ない方は、アールグレイ(Earl Grey)の紅茶を思い浮かべてください。カップから立ち上る、あの独特の芳香、少しの渋みと華やかさ。あれこそが、ベルガモットの香りそのものです。
香道Lab.香りの世界では、この二つは全く異なるパレットの絵の具として扱われます。ネロリは香りのハートノート(中心)でフローラルな気品を与え、ベルガモットはトップノートで輝かしい「最初の光」を与えるために使われることが多いのです。
植物学の真実:ネロリとベルガモットの「出自」の違い


なぜ、これほどまでに香りが違うのでしょうか? その答えは、二つの香料の「出自」、つまり植物学的なルーツと抽出方法にあります。多くの人が混同している、最も重要な真実がここにあります。
ネロリ (Neroli) の正体
植物名: ビターオレンジ (Citrus aurantium)
抽出部位: 花 (Flower)
抽出方法: 水蒸気蒸留法 (Steam Distillation)
ベルガモット (Bergamot) の正体
植物名: ベルガモットオレンジ (Citrus bergamia)
抽出部位: 果皮 (Peel / Rind)
抽出方法: 圧搾法 (Cold Press)
この二つの大きな違いに気づかれましたか?
第一に、ネロリとベルガモットは、そもそも異なる植物から採られています。ネロリは「ビターオレンジ(Citrus aurantium)」の木に咲く花から。ベルガモットは「ベルガモットオレンジ(Citrus bergamia)」という、ビターオレンジとシトロン(またはレモン)のハイブリッド(交配種)とされる別の植物の果実から採られます。
第二に、抽出部位が「花」と「果皮」で全く異なります。ネロリは繊細な「花びら」から、ベルガモットはゴツゴツとした「果物の皮」から香りを抽出します。これが、ネロリがフローラルな側面を持ち、ベルガモットがタルトでビターな側面を持つ直接的な理由です。
そして第三に、抽出方法が決定的に違います。ネロリは、大量の花を釜に入れ、水蒸気を通してその芳香成分を抽出する「水蒸気蒸留法」を用います。このプロセスにより、ネロリの特徴的な香りの成分であるリナロール、酢酸リナリル、リモネンなどが抽出されます。特にリナロール(全体の約30~55%)がネロリの香りの中心的な役割を担い、フレッシュで花のような側面を生み出しています。一方、ベルガモットは果皮を「圧搾法(コールドプレス)」、つまり物理的に絞ることでオイルを採ります。これにより、熱に弱いデリケートな香りの成分が壊れることなく、果皮に含まれるタルトでスパイシーな複雑な香りがそのまま抽出されるのです。
ネロリが「花のエッセンス(本質)」であり、ベルガモットが「果皮のジュース(生のアロマ)」である、と考えると分かりやすいかもしれません。これが、二つの香りが似て非なる、根本的な理由です。
専門家の視点:ビターオレンジという「香りの奇跡の木」


フレグランスを学ぶ者が必ず出会う、さらなる「混乱の源」があります。それが、ネロリの故郷である「ビターオレンジ(Citrus aurantium)」の木です。この木は、調香師たちから「香りの奇跡の木」あるいは「香水界の金鉱」と呼ばれています。なぜなら、この一本の木から、抽出する「部位」と「方法」を変えるだけで、4種類もの全く異なる香料を生み出すことができるからです。
この「ビターオレンジの木」の全体像を理解することこそが、ネロリの個性を真に理解する鍵となります。ここで、専門家である私が、その全貌を整理しましょう。



ビターオレンジの木から採れる4つの香料
| 原料名 (Ingredient) | 抽出部位 (Part) | 抽出方法 (Method) | 香りの特徴 (Scent Profile) |
|---|---|---|---|
| ネロリ (Neroli) | 花 (Flower) | 水蒸気蒸留法 (Steam Distillation) | 緑がかった、スパイシー、フレッシュ、フローラル。軽やかで、茎や葉の青っぽさも感じさせる。 |
| オレンジブロッサム・アブソリュート (Orange Blossom Absolute) | 花 (Flower) | 溶剤抽出法 (Solvent Extraction) | 暖かく、ジャスミンに似ている。甘いブドウのようで、深く、官能的(インドリック)な重さがある。 |
| プチグレン (Petitgrain) | 葉・小枝 (Leaves & Twigs) | 水蒸気蒸留法 (Steam Distillation) | ハーバル、ウッディ、ゼスティ。まるで緑の葉を手で握りつぶした時のような、グリーンでビターな香り。 |
| ビターオレンジオイル (Bitter Orange Oil) | 果皮 (Fruit Peel) | 圧搾法 (Cold Press) | 豊かで複雑な柑橘の香り。ビターオレンジの果皮から採取され、ベルガモット(ベルガモットオレンジの果皮)とは異なる植物種のオイルである。 |
この表を見てください。私たちが今注目しているネロリは、ビターオレンジの「花」を「水蒸気蒸留」したものです。その香りは、軽やかでフレッシュ、グリーンな側面が際立ちます。
しかし、全く同じ「花」を、より強力な「溶剤抽出法」で抽出すると、オレンジブロッサム・アブソリュートと呼ばれる、全くの別物になります。こちらは、蒸留では抽出できない重い芳香成分(インドールなど)まで取り出すため、暖かく、甘く、ジャスミンのような官能的な香りになるのです。
ネロリが「純潔な白」のイメージなら、オレンジブロッサムは「官能的な象牙色」のイメージ。同じ花から、これほど違う個性が引き出されるのです。そして、葉や枝からはハーバルな「プチグレン」が採れます。
この事実を知ると、ネロリの個性がより鮮明になります。ネロリは、ビターオレンジの木が持つ最もフレッシュで、グリーン・フローラルな側面を切り取った、清らかなエッセンスなのです。
歴史が語る物語:ネーロラ公妃と「ケルンの水」


香料の個性は、その歴史的な物語と深く結びついています。ネロリとベルガモットの決定的な違いは、それぞれの香りが歩んできた「物語」にも色濃く表れています。
ネロリ (Neroli) の物語は、「高貴な個人のための、贅沢な香り」として始まります。その名は、17世紀のイタリア、ネーロラ公国の公妃であったアンナ・マリーア(Anna Maria de La Trémoille-Noirmoutier)に由来します。彼女はこのビターオレンジの花の香りを深く愛し、手袋を香らせたり、入浴の際に使ったりしたことで知られています。当時の貴族社会で、この香りは「ネーロラ公妃の香り」として大流行しました。このエピソードから、ネロリの香りは「純潔」「洗練」「高貴」といったイメージと結びつき、王族のウェディングブーケにも使われる伝統的な香りとなったのです。
ネロリの歴史的イメージ
由来: 17世紀イタリアのネーロラ公妃
用途: 手袋や入浴時のパーソナルな香り付け
キーワード: 高貴、洗練、純潔、パーソナルラグジュアリー
一方、ベルガモット (Bergamot) の物語は、「公衆のための、リフレッシュメント」として花開きます。ベルガモットの名が歴史に大きく刻まれたのは、18世紀初頭、ドイツのケルン市です。イタリア人調香師ジョヴァンニ・マリア・ファリーナが、1709年にケルンで、ベルガモット、ネロリ、レモン、ラベンダーなどをブレンドした、驚くほどフレッシュな香りの水「オーデコロン(Eau de Cologne)=ケルンの水」を創り出しました。これは世界最古の香水の一つとされ、ナポレオンも愛用したと言われています。当時の重く動物的なムスク系の香りが主流だった中で、ベルガモットの弾けるような爽快感は「清潔」と「活力」の象徴でした。
ベルガモットの歴史的イメージ
由来: 18世紀ドイツの「ケルンの水(オーデコロン)」
用途: 清潔感と活力を与えるリフレッシュメント
キーワード: フレッシュ、清潔、活力、パブリック(公衆)
面白いことに、オーデコロンの処方には、ネロリとベルガモットの両方が使われていました。この時点で、二つは「ライバル」ではなく、最高の「パートナー」だったのです。ベルガモットが輝かしいトップノートを、ネロリがグリーンフローラルなハートノートを担い、あのクラシックな香りの骨格を創り上げていました。この歴史を知ることで、二つの香りの関係性がより深く理解できるはずです。
「ネロリ ベルガモット 違い」を識る、運命の香水選び
- シーン別使い分け:あなたが輝く「TPOと心理効果」
- ネロリの名香:地中海の風を纏う「至高の3本」
- ベルガモットの名香:洗練された気品を纏う「至高の3本」
- マイスターの推薦:ゲランが示す「二つの香りの解釈」
シーン別使い分け:あなたが輝く「TPOと心理効果」


さて、二つの香りの「出自」と「物語」を理解したところで、いよいよ実践編です。「で、結局、私はどちらを、いつ使えばいいの?」という疑問にお答えしましょう。ネロリとベルガモットは、どちらもユニセックス(男女兼用)で使え、春夏の季節やビジネスシーンにも適しているという共通点があります。どちらも「清潔感」があるからです。しかし、その清潔感の「質」と、もたらす「心理効果」が異なります。



ネロリは「鎮静」と「集中の香り」
ネロリの香りは、「心を落ち着かせ、不安を和らげる」効果があることで知られています。その芳香成分であるリナロールなどには、ストレスホルモン「コルチゾール」のレベルを低下させ、心拍数を穏やかにし、自律神経のバランスを整える作用が期待できるという研究結果もあります。ネロリは、高貴な歴史が示す通り、自分自身を慈しむための「内向き」の香りなのです。
ネロリがおすすめのTPO(シーン)
重要なプレゼンテーションや会議の前: 高ぶる神経を鎮め、冷静さと集中力を取り戻したい時。
ストレスを感じるオフィスでの日常使い: 周囲に不快感を与えない清潔感を保ちつつ、自分のメンタルをケアしたい時。
就寝前やバスタイム: 一日の終わり、自分自身を深くリラックスさせ、上質なセルフケアをしたい時。
人に「知的で洗練された」印象を与えたい時: 華やかさの奥に、一本筋の通ったグリーンの知性を感じさせます。
ベルガモットは「高揚」と「活力の香り」
一方、ベルガモットの香りは、「気分を高揚させ、楽観的にする」効果に優れています。太陽の光をたっぷり浴びた果皮の香りは、心理的に「日当たり」を良くしてくれるような、明るく「外向き」のエネルギーに満ちています。「ケルンの水」が活力の象徴であったように、現代でも気分転換やエネルギーチャージの役割を担います。
ベルガモットがおすすめのTPO(シーン)
月曜日の朝や、気分が乗らない時: スイッチを入れ、ポジティブなエネルギーで一日をスタートさせたい時。
初対面の人と会う時やデート: 明るく、親しみやすい「太陽のような」印象を演出したい時。
アウトドアやドライブ: 爽やかな空気と調和し、開放的な気分をさらに高めたい時。
人に「エネルギッシュで快活な」印象を与えたい時: スパイシーな側面が、ただの「いい人」で終わらない個性をプラスします。
自分を「鎮めたい」ならネロリを、自分を「上げたい」ならベルガモットを。これが、香りのマイスターとして私がお伝えしたい、最も実用的な使い分けの極意です。
ネロリの名香:地中海の風を纏う「至高の3本」


ネロリの「グリーン・フローラル」な個性を見事に表現した、香水史に残る3本の名香をご紹介します。これらは、ネロリという香料をどのように解釈し、芸術へと昇華させたかを示す、最良の教科書です。
1. トム フォード ビューティ (TOM FORD BEAUTY) – ネロリ・ポルトフィーノ オード パルファム
現代における「ネロリ香水」の人気を決定づけた、アイコン的存在です。イタリアのリビエラ、ポルトフィーノの「弾けるような水しぶき、涼やかな風、青々とした木々」を表現したこの香りは、伝統的なオーデコロンを、トム・フォードらしい贅沢な解釈で再構築したものです。
| トップノート | ベルガモット、マンダリンオレンジ、レモン、ビターオレンジ、ラベンダー、ローズマリー、マートル |
| ミドルノート | アフリカンオレンジフラワー、ネロリ、ジャスミン、ピトスポルム |
| ベースノート | アンバー、アンブレット(ムスクマロウ)、アンジェリカ |
驚くべきことに、トップノートにはベルガモットやビターオレンジが使われています。これは歴史的なオーデコロンの構成に忠実であり、ベルガモットの輝きが、ミドルノートの主役であるネロリとアフリカンオレンジフラワーのフローラルな魅力を最大限に引き立てる設計になっています。アンバーやアンブレットのベースが、オーデコロンの弱点である「香りの持続性」を補い、一日中、肌の上で贅沢なリゾートの記憶を蘇らせます。「王道のネロリ」を体験したいなら、まずこの一本です。
2. ジョー マローン ロンドン (JO MALONE LONDON) – バジル & ネロリ コロン
ネロリの「グリーン」な側面に、ハーブのひねり(ツイスト)を加えた、英国らしいモダンな香りです。
| トップノート | バジル |
| ハートノート | ネロリ |
| ベースノート | ホワイトムスク、ベチバー |
この香水の主役は、トップノートのバジルです。バジルの持つ「ハーブの温かみ」と「ペッパーのようなスパイシーなエッジ」が、ネロリの「クリーンでフレッシュなフローラル」と出会うことで、誰もが知るネロリの香りに「意外性」と「知性」を与えています。ベースのホワイトムスクが全体を清潔にまとめ上げ、都会的でスタイリッシュな印象を確立しています。トム・フォードが「太陽」なら、こちらは「木陰の涼風」。甘くない、キリッとしたネロリを探している方におすすめです。
3. ゲラン (GUERLAIN) – アクア アレゴリア フォルテ ネロリア ベチバー
こちらは、ネロリを単なる「爽やかな香り」ではなく、「深みのあるウッディ・フローラル」として描き出した意欲作です。ゲランの名高い「アクア アレゴリア」コレクションの、より深く豊かな「フォルテ」ラインに属します。
| トップノート | フィグリーフ(イチジクの葉)、ベルガモット、プチグレン |
| ミドルノート | ネロリ、フィグ(イチジクの実)、ローズ |
| ベースノート | ベチバー、シダー、トンカビーン |
調香師デルフィーヌ・ジェルクは、「沈みゆく太陽の光を浴びて黄金に輝くネロリ」をイメージしました。ここでネロリと組み合わされるのは、甘く青々としたフィグ(イチジク)と、大地を思わせるベチバーです。ネロリのフローラルな輝きが、フィグのミルキーな甘さと溶け合い、最後はベチバーとトンカビーンの温かく落ち着いたウッディノートに包まれます。「オーデコロンの枠を超えた、持続するエレガントなネロリ」を求める、香水上級者にも応える一本です。
ベルガモットの名香:洗練された気品を纏う「至高の3本」


次に、ベルガモットの「タルト&スパイシー」な魅力を、見事に主役へと押し上げた3本の名香です。これらは、一瞬で消えやすいトップノートであるベルガモットを、いかにして香水の「核」として輝かせ続けるか、という調香師の挑戦の結晶でもあります。
1. ル ラボ (LE LABO) – ベルガモット 22
「ベルガモット 22」は、その名の通り22種類の香料を使い、ベルガモットという素材を「香水作品」へと昇華させた、現代の傑作です。ル ラボは、この香りを「フレッシュ、スイート、そしてセンシュアル。アクロバティックなほどの輝き」と表現しています。
この香水の凄みは、ベルガモットの輝きを、他のノートで「固定」し「増幅」している点にあります。H3-1-3で学んだ「プチグレン」がフローラルな繊細さを、グレープフルーツが「苦味」を、そしてアンバーとムスク、ベチバーのベースが「屈強さ」を与えています。アールグレイのあのベルガモットが、これほどまでに複雑で、温かみがあり、センシュアルになり得るのかと驚かされるはずです。「ベルガモットを主役にした、完成された香水」を求めるなら、これ以上の選択肢はありません。
2. アクア ディ パルマ (ACQUA DI PARMA) – ブルー メディテラネオ ベルガモット ディ カラブリア
イタリアの太陽と地中海をテーマにした、アクア ディ パルマの「ブルー メディテラネオ」コレクション。その中でも、これはベルガモットの「素材の良さ」を最もピュアに、ストレートに表現した香りです。
| トップノート | カラブリアン ベルガモット、シトロン |
| ミドルノート | シダーウッド、レッドジンジャー |
| ベースノート | ベチバー、ベンゾイン、ムスク |
この香りは、ベルガモットの「果皮」そのものです。シトロンがその輝きを増幅し、ミドルノートのレッドジンジャーが、ベルガモットが元々持つ「スパイシーな側面」を鮮やかに引き立てます。ル ラボが「構築美」なら、こちらは「素材美」。イタリア、カラブリア地方の太陽を浴びて育った、最高品質のベルガモットの果汁をそのまま浴びるような、この上なくジューシーでハッピーな香りです。気分をリフレッシュしたい時に、これ以上の相棒はいないでしょう。
3. ゲラン (GUERLAIN) – アクア アレゴリア ベルガモット カラブリア
先ほどの「ネロリア ベチバー」と同じ、ゲランのアクア アレゴリアから、今度はベルガモットを主役にした一本です。これは、ベルガモットという素材を「徹底的に研究し、解剖した」かのような、知的な香りです。
| トップノート | カラブリアン ベルガモット、プチグレン |
| ミドルノート | ジンジャー、カルダモン |
| ベースノート | ホワイトムスク、ウッディノート |
調香師ティエリー・ワッサーとデルフィーヌ・ジェルクは、ベルガモットを「カラブリアの緑の金」と呼びます。彼らは、ベルガモットの「マイルドなスパイシーさ」を、本物のジンジャーとカルダモンというスパイスで増幅しました。さらに、ベルガモットが持つ(ビターオレンジ由来の)グリーンな側面を、プチグレンで補強しています。これは「ベルガモットの香りが好き」という人が、その香りの「どの部分」を好きなのかを自覚させてくれる、教科書のような一本です。ベルガモットの多面性を学びたい方に、心からおすすめします。
マイスターの推薦:ゲランが示す「二つの香りの解釈」


ここまで読んでくださった、真剣なあなたへ。ネロリとベルガモットの違いを真に理解するための「最終レッスン」をしましょう。
私たちは今、ゲランという1828年創業の伝説的なメゾン(香水一家)から、奇しくも同じ「アクア アレゴリア」ラインに属し、同じ調香師チーム(ティエリー・ワッサーとデルフィーヌ・ジェルク)によって創られた、「ネロリア ベチバー」と「ベルガモット カラブリア」という二つの作品に出会いました。これ以上の「A/Bテスト」は存在しません。



ゲランの答えは、驚くほど明快でした。
ゲランの「ベルガモット」解釈
作品名: アクア アレゴリア ベルガモット カラブリア
香調: シトラス
コンセプト: 「太陽を浴びた旅」
アプローチ: ベルガモットの「スパイシーさ」と「グリーン」な側面を、ジンジャー、カルダモン、プチグレンで増幅した。→ ベルガモットを「究極のシトラス」として扱った。
ゲランの「ネロリ」解釈
作品名: ネロリア ベチバー
香調: ウッディ フローラル ムスク
コンセプト: 「光を浴びたネロリ」
アプローチ: ネロリの「フローラル」な側面を、フィグやローズで増幅し、ベチバーやシダーという「ウッディ」なベースで支えた。→ ネロリを「シトラスの特性を持つ、究極のフローラル」として扱った。
もう、お分かりですね。ベルガモットは「シトラス」であり、ネロリは「フローラル」なのです。
偉大な調香師たちは、ベルガモットを主役にする時、その「スパイシーさ」を際立たせるパートナー(=スパイス)を選びます。一方で、ネロリを主役にする時、その「フローラルな輝き」を際立たせるパートナー(=他の花やウッディノート)を選ぶのです。
この二つの作品を嗅ぎ比べた時、あなたは「ネロリ ベルガモット 違い」というキーワードを、頭ではなく、魂で理解することになるでしょう。
総括:「ネロリ ベルガモット 違い」を理解し、あなたの香りの物語を始めよう
この記事のまとめです。
- ネロリは「花」(ビターオレンジの花)から抽出される
- ベルガモットは「果皮」(ベルガモットオレンジの皮)から抽出される
- 二つの香料は、植物学的に異なる植物に由来する
- ネロリの抽出法は「水蒸気蒸留法」である
- ベルガモットの抽出法は「圧搾法(コールドプレス)」である
- ネロリの香りは「フローラル」で「グリーン」な側面を持つ
- ベルガモットの香りは「タルト(酸味)」で「スパイシー」な側面を持つ
- アールグレイの紅茶の香りは、ベルガモットの香りである
- ネロリの名は、17世紀の「ネーロラ公妃」に由来する
- ベルガモットは、18世紀の「ケルンの水(オーデコロン)」の主要香料である
- ビターオレンジの木一本から、ネロリ、オレンジブロッサム、プチグレンが採れる
- ネロリは心理的に「鎮静・集中」の効果が期待できる
- ベルガモットは心理的に「高揚・活力」の効果が期待できる
- トム フォード「ネロリ・ポルトフィーノ」は、ネロリ系コロンの現代的な最高傑作である
- ル ラボ「ベルガモット 22」は、ベルガモットを複雑な香水作品へと昇華させた傑作である










